#01 キッズアート葉山

代表:杉野三千代さん
平成 11 年設立。
障がいがあるなしにかかわらず、児童、生徒が保護者とともに参加できる造形教室。

 

ないから作った 障がいを持つ子ども向けの習い事

キッズアート葉山のはじまりは、平成11年(1999年)に、障がいを持つ子どもたちにも習い事をさせたいと考えた親同士で、造形の先生を都心から葉山まで呼んで指導してもらったことがスタートです。「当時、障がいのある子は習い事を断られたの。知り合い経由で東京芸術大学出身の先生に声をかけたら“いいよいいよ、やるよ”って言ってくれて」

講師の先生は何代か変わりましたが、ご自身のお子さんが造形を続けられている杉野さんが事務方を務めてキッズアート葉山は続いています。現在指導をしてくださるのは武蔵美術大学出身の下田あゆみ先生。2021年3月現在15名が在籍。小学生が一番多く20代やシニアもいます。

キッズアート葉山では、過去のどの先生も「こうだ ああだ」と指示するのではなく「あ、いいじゃーん」と子どもたちのやることをまず受け止めてくれます。「ここは絶対に教えないの。先生もこうじゃなきゃいけないと一言もいわない。この題材はこうだよと見せるけど、それをどう使おうが、どのようにしようが、その子の自由。やりたくなければそのへんにゴロンと寝転んでいる子もいる」

「今の世の中、結果次第みたいなところがあるでしょう。でもキッズアート葉山では、過程のところで子どもたちが自分の努力が褒められたり、認めらてもらえる。素敵!わ、いい色!って、親とは違う大人から声をかけてもらった経験は大きいと思う」「それにね、子どもは子どもから学ぶことが多い。隣の子の様子を見ていると、自分もやってみようってなるの」

親は「子どもべったり」から離れていい

障がいのあるお子さんを、ご自身でも育てられてきた杉野さん。親が陥る「子どもべったり」を知っているからこそ、教室では親に「置いていっていいよ」と言うそうです。「私の頃は障がいのある子どもを置いていっていいよっていってくれる場所もなかった。でも親には下や上の子の面倒だってあるし、休息も必要だし。キッズアート葉山に来ても子どもに付き添っているのではなくて、親同士でお茶飲んでおしゃべりしてもらってるわ」

キッズアート葉山が目指すこれから

杉野さんの次の目標は就労支援。「キッズアート葉山に来ている方たちのアート作品を商品にかえて販売する“アトリエルフト”を始めました。販売会があると作品を作ろうってきっかけにもなる。昨年12月の販売会では、講師の下田あゆみ先生にも葉山はばたき生活介護事業所とコラボした作品を出してもらいました。いずれ就労と生活介護を抱き合わせた小規模多機能型事業所を作りたい。細々でもやり続けることで見えてくるものもあるはず」

「ただ黙って見ている」その優しさがほしい

最後にどうしたら「やわらかな心」が持てるのか、杉野さんに聞きました。
「これは実際に私が経験したことだけど、町の中で、乗り物が好きな自閉症の子が運転手さんの後ろにすごい勢いで走って行くところや、人目も気にせずにワンワン泣くダウン症の若い方と出会ったことがあります。そういう場面で、障がいがある人たちが好きなこと=こだわりを満たすことを認めてほしい。うるさいなって言わずに、ただ黙ってそれを見ててくれる、その優しさでじゅうぶん。そういう優しさが広がる社会になるといいなと思います」

◯キッズアート葉山 Data

代表:
杉野三千代
活動:
月2回、火曜日
場所:
一色会館(葉山町一色2167)
在籍:
15名。平均8名ほどで活動
講師:
下田あゆみ先生
造形テーマの例:
染色、ろうそく作り、石膏でオブジェ、発泡スチロール版画、毛糸でコラージュ etc.
ホームページ:
https://kidsarthayama.wixsite.com/home
インスタグラム:
https://www.instagram.com/kidsarthayama